不動産売却で埼玉県春日部市の相続した家の取得費が分からないときの実践的な対応策
2026/09/17
春日部市で相続した家を売却しようとしたものの、亡くなった親が購入したときの売買契約書が見つからず、「取得費をどのように確認すればよいのか」と悩むことがあります。
不動産売却にかかる譲渡所得は、売却価格から取得費や譲渡費用などを差し引いて計算します。相続した家の場合、原則として被相続人がその不動産を取得したときの金額を引き継ぎます。相続時の固定資産税評価額や相続税評価額を、そのまま取得費にできるわけではありません。
取得費が分からない場合は、売却価格の5%を概算取得費として計算する方法もあります。しかし、実際の取得費より低くなると課税対象の譲渡所得が大きくなる可能性があるため、すぐに5%で判断せず、購入時の契約書や領収書、住宅ローン関係書類などを探すことが大切です。
この記事では、相続した家の取得費について最初に知っておきたいこと、売買契約書が見つからない場合に探したい資料、概算取得費を使う前の確認事項、取得費加算の特例や確定申告の注意点を整理します。
目次
相続した家の取得費で最初に知っておきたいこと
相続税評価額ではなく被相続人の取得費を引き継ぐ
相続した土地や建物を売却する場合、取得費は相続した時点の価格へ置き換わるのではなく、原則として亡くなった方がその不動産を取得したときの金額を引き継ぎます。所有期間も、相続した日からではなく、原則として被相続人が取得した日から引き継ぎます。
取得費には、被相続人が支払った土地・建物の購入代金のほか、購入時の仲介手数料、登記費用、不動産取得税などを含められる場合があります。ただし、建物については、購入代金などから所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算します。土地は減価償却しません。
注意したいのは、相続税を計算するときの相続税評価額や、固定資産税を計算するときの固定資産税評価額が、そのまま売却時の取得費になるわけではないことです。現在の査定価格や売却価格から、過去の取得費を逆算することもできません。
取得費が分からないからといって、家を売却できないわけではありません。ただし、取得費は譲渡所得と税額に影響するため、実家の片付けを始める段階から、被相続人が保管していた契約書や領収書などを捨てずに確認することが大切です。
売買契約書が見つからないときに探したい書類
購入代金と購入時の費用を確認できる資料を集める
相続した家の取得費を確認するときは、まず被相続人が購入した当時の売買契約書を探します。契約書と一緒に保管されていることが多い売買代金の精算書、仲介手数料の領収書、登記費用の明細、不動産取得税の納税通知書なども確認しましょう。
注文住宅や建売住宅の場合は、工事請負契約書、建築代金の領収書、土地の売買契約書などが別々に残っていることがあります。土地と建物の金額が区分されている資料があれば、それぞれの取得費を計算する際の重要な手がかりになります。
自宅や貸金庫などを探しても見つからない場合は、購入時の不動産会社や建築会社、住宅ローンを利用した金融機関へ、当時の資料が残っていないか問い合わせます。被相続人の通帳や振込記録、住宅ローンの契約書、返済予定表などから、支払額を確認できる場合もあります。ただし、購入から長期間経過していると、相手方に資料が保存されていないこともあります。
登記事項証明書では、取得した時期や当時の所有者、抵当権の設定内容などを確認できますが、通常は実際の購入価格までは分かりません。また、固定資産税評価証明書や課税明細書に記載された評価額も、そのまま取得費として使用できる金額ではないため注意が必要です。
購入後に増築や設備の改良をしている場合は、工事請負契約書や領収書も探します。資産価値を高めたり使用可能期間を延ばしたりする支出は取得費に加えられる場合がありますが、通常の修繕費や維持管理費がすべて対象になるわけではありません。
集めた資料だけで取得費を判断できるか、どの費用を含められるかは個別の事情によって異なります。資料は処分せず、時系列に並べたうえで税理士へ確認できるよう整理しておきましょう。
概算取得費の5%を使う前に確認したいこと
購入時の資料を探しても取得費が分からない場合は、売却による収入金額の5%を概算取得費として計算できます。例えば、土地と建物を2,000万円で売却した場合、概算取得費は100万円です。
ただし、取得費が100万円になるという意味ではなく、あくまで譲渡所得を計算するために、売却価格の5%相当額を取得費とみなす取り扱いです。実際の取得費が5%より多かったとしても、それを証明できず概算取得費を使用すると、課税対象となる譲渡所得が大きくなる可能性があります。
譲渡所得は、基本的に売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。概算取得費を使用する場合でも、売却時に支払った仲介手数料や測量費など、譲渡費用に該当する支出は別に差し引ける場合があるため、領収書や明細を保管しておきましょう。
なお、周辺の取引事例、現在の査定価格、固定資産税評価額、相続税評価額を、そのまま過去の取得費として使用することはできません。統計資料などを利用して取得費を推計する方法が検討されることもありますが、計算方法や資料の妥当性について個別の判断が必要であり、必ず認められるとは限りません。
概算取得費を選ぶ前に、実際の取得費を示せる資料が本当に残っていないかを改めて確認し、売却予定額をもとに税額を比較しておくことが大切です。推計による申告を検討する場合や税額への影響が大きい場合は、税理士へ相談しましょう。
取得費が不明なときに確認したい特例と確定申告
取得費・譲渡費用・所有期間を分けて整理する
相続した家を売却したときの譲渡所得は、基本的に「売却価格-取得費-譲渡費用-適用できる特別控除」で計算します。取得費が分からない場合でも、売却価格の全額がそのまま利益になるわけではありません。取得費、譲渡費用、特例の適用可否を一つずつ分けて確認することが大切です。
取得費については、原則として被相続人が土地や建物を購入したときの代金と購入時の費用を引き継ぎます。ただし、建物の取得費は購入代金などをそのまま使用するのではなく、被相続人と相続人の所有期間に応じた減価償却費相当額を差し引いて計算します。
譲渡費用には、売却時に支払った仲介手数料、売買契約書に貼付した印紙代、売却するために必要となった測量費や建物の解体費などが該当する場合があります。一方、固定資産税や通常の修繕費、相続登記の費用などは、原則として譲渡費用には含まれません。
税率を判断する際の所有期間は、相続した日から数えるのではなく、原則として被相続人が取得した日を引き継ぎます。売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えているかどうかによって、長期譲渡所得と短期譲渡所得の区分が変わるため、登記事項証明書や購入時の契約書で取得日も確認しましょう。
確定申告に備えて、取得費の根拠となる資料だけでなく、売却時の売買契約書、仲介手数料や測量費などの領収書も保管します。概算取得費や税の特例を利用する場合は、適用条件と必要書類を事前に確認し、判断が難しいときは税理士へ相談しましょう。
不動産売却でかかる税金の全体像や所有期間による税率の違いは、「不動産売却の税金を基礎から具体例で徹底解説」でも詳しく紹介しています。
取得費加算の特例は売却期限と適用条件を確認する
相続や遺贈によって取得した不動産を売却する場合、相続時に納めた相続税の一部を、売却時の取得費へ加算できることがあります。これを「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」といいます。
この特例を利用するには、主に次の条件を満たす必要があります。
1.相続または遺贈によって財産を取得していること
2.その財産を取得した人に相続税が課税されていること
3.定められた期限までに、その相続財産を売却していること
売却期限は、相続開始日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までです。相続税の申告期限は、原則として相続開始を知った日の翌日から10か月以内であるため、一般的には「相続開始からおおむね3年10か月以内」が目安になります。
取得費へ加算できるのは、納付した相続税の全額とは限りません。売却した不動産に対応する相続税額を所定の計算方法で算出します。そのため、相続税申告書の控え、売却した不動産の売買契約書、取得費や譲渡費用を確認できる資料を保管しておくことが大切です。
また、相続した空き家を売却した場合の3,000万円特別控除など、同じ不動産について併用できない特例があります。どちらを利用した方が有利になるかは、売却価格や取得費、相続税額によって変わるため、売却前に税理士へ確認しましょう。
売却した翌年の確定申告に備えて書類を整理する
相続した家を売却して譲渡所得が生じた場合は、原則として売却した年の翌年に確定申告を行います。取得費が分からず概算取得費を使用した場合も、売却価格、取得費、譲渡費用、適用する特例を区分して計算する必要があります。
確定申告に向けて、主に次の書類を整理しておきましょう。
1.売却時の売買契約書
2.仲介手数料や測量費など譲渡費用の領収書
3.購入時の売買契約書や取得費を確認できる資料
4.相続登記や相続した経緯を確認できる資料
5.相続税申告書の控え
6.譲渡所得の内訳書や利用する特例の計算明細書
取得費加算の特例を利用する場合は、相続税申告書の控えや「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」などが必要になります。適用する特例によって提出書類が異なるため、売買契約を結ぶ前から確認しておくと安心です。
なお、取得費の根拠として集めた資料が、すべて確定申告書への添付を求められるとは限りません。しかし、税務署から計算内容の確認を受けたときに説明できるよう、使用した資料や計算過程は申告後も保管しておきましょう。
共有で相続した不動産を売却した場合は、原則として相続人ごとに持分に応じた譲渡所得を計算し、それぞれが確定申告を行います。また、申告先は不動産の所在地ではなく、原則として売却した人の住所地を管轄する税務署です。春日部市にある家を売却した場合でも、相続人が市外に住んでいれば申告先が異なることがあります。
取得費の推計や特例の選択、必要書類の判断は税務に関する専門的な内容です。不明点がある場合は、売却後ではなく売却前の段階で税理士または所轄税務署へ確認しましょう。
取得費が分からない相続不動産を売る前の最終確認
空き家の3,000万円特別控除との違いを比較する
相続した家が空き家になっている場合は、一定の条件を満たすことで、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除」を利用できる可能性があります。
主な確認事項は、被相続人が亡くなる直前まで居住していた家であること、原則として昭和56年5月31日以前に建築された家であること、相続後に賃貸や事業などに使用していないこと、売却価格が1億円以下であることなどです。売却期限や耐震基準、建物を取り壊す時期にも条件があります。
なお、この空き家の3,000万円特別控除と、相続税の一部を取得費へ加算する特例は、同じ不動産の売却について併用できません。取得費が分からない場合でも、先に概算取得費だけで税額を計算するのではなく、それぞれの特例を利用した場合の譲渡所得と税額を比較することが大切です。
適用条件を満たしているかどうかは、建築時期、被相続人の居住状況、相続後の利用状況などによって変わります。空き家を解体したり売買契約を結んだりする前に、税理士や市区町村の担当窓口へ必要書類を確認しましょう。
相続した空き家の管理や査定、売却までの流れについては、「不動産売却で相続した空き家の埼玉県春日部市売却手順と節税ポイント」もあわせてご覧ください。
不動産会社・税理士・司法書士の役割を分けて相談する
相続した家の売却では、不動産会社だけですべての手続きや税務判断を行えるわけではありません。相談内容に応じて、それぞれの専門家を使い分ける必要があります。
不動産会社は、春日部市周辺の売却相場の確認、査定、売却方法の提案、買主の募集、売買契約や引渡しを担当します。購入時の資料を探す際に、どのような不動産関係書類が残っているかを一緒に整理することもできますが、取得費として税務上認められるかを最終的に判断する立場ではありません。
取得費の計算、概算取得費を使用するかどうかの判断、取得費加算や空き家の特例、確定申告については、税理士または所轄税務署へ相談します。相続登記や登記名義の確認、売却に伴う所有権移転登記については司法書士が相談先です。
相続人同士で遺産分割や売却代金の分け方について意見がまとまらない場合は、弁護士への相談が必要になることもあります。誰に何を相談するのかを整理すると、確認漏れや手続きの遅れを防ぎやすくなります。
春日部市で相続した家を売却する前に整理したい順番
春日部市で相続した家を売却する場合は、最初に相続人と登記名義を確認し、遺産分割協議や相続登記の状況を整理します。そのうえで、被相続人が保管していた購入時の契約書や領収書、住宅ローン関係書類などを探しましょう。
次に、不動産会社へ査定を依頼し、想定される売却価格と売却に必要な費用を把握します。取得費が判明した場合と、売却価格の5%を概算取得費とした場合の譲渡所得を比較し、利用できる税の特例について税理士へ確認します。
売却価格だけを見て現金化後の金額を判断すると、仲介手数料や測量費、解体費、譲渡所得税などを差し引いた後の手取り額が想定より少なくなることがあります。売却前に概算の手取り額まで確認しておくことが大切です。
取得費が分からなくても、相続した家の売却を諦める必要はありません。資料を探す、概算取得費を使用した場合の税額を確認する、利用できる特例を比較するという順番で進めれば、選択肢を整理できます。急いで契約を結ぶ前に必要な確認を行い、納得できる条件での売却を目指しましょう。
遺言書や相続人、登記名義など、相続後の確認事項については、「春日部市で相続した家、何から始める?売却前に確認したい7つのこと」で順番に解説しています。
